木花

コノハナ

「椿の海の記」

石牟礼道子さんの本「苦海浄土」のテーマは水俣病です。

私はその本をこれから読もうと思っているのですが

その前風景とも言うべき、昭和初期の水俣の、

満州事変の起きる直前の三、四年、

石牟礼さんの二歳くらいから五歳までくらいのお話しが

「椿の海の記」には記されています。

 

読んでいると、時折、和歌をよんでいるような心地になります。

韻をふむように響いてくる文章です。

ほんの四十年ほど前、こんなに美しい文章を書くことができた

日本のひとの、心と言葉はいま、どこにあるのだろうかと

せつなく思います。

 

心優しかった時代の山川や海の、

いわば精神性を保っていたふるさとを

描いてみたかったのだとおもう。

あとがきにそう書かれている通り、

貧しさのなかで、どうにもならない現実に絡めとられながら

切実に生きている人々の姿がそこにあります。

 

昭和の始めの日本人は、こんな風に生きていたのかと

ほんの八十年の間に、ここまで様変わりするものかと

息をのむような

 

わたしたちが失ってきた

世の中の貧しさと、自然の豊かさ美しさと

そこに生きるひとびとの心根のやさしさが

一冊の本のなかに描かれています。

 

ことばで感想を述べることがとても難しい

感じることしかできない本というものに

出合った気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

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